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参考:9 速足歩きで元気に!

 

病気の9割は速足歩きで治る!

 

風邪を引いたとき、健康診断で気になる項目が見つかったとき、あなたなら、どうするだろうか? まずは医者にかかる、あるいは、薬局に行って市販薬を買う、という人が大半だろう。
しかし尼崎市でクリニックを営む長尾和宏医師は、毎日速足で歩くことをすれば、「大半の病気は医者いらず、薬いらずになる」と言う。
いったいどういうことか? 『病気の9割は速足で歩くだけで治る!』(山と溪谷社) の著書もある長尾医師に聞いた。 
 私は、兵庫県の尼崎市でクリニックを営んでいる町医者です。私の外来には、高血圧、糖尿病、胃腸不良、うつ病、不眠症、認知症、膝や腰の痛み――など、さまざまな病気、症状で困っている患者が訪れます。当然、病気や症状によって治療は異なりますが、どんな病気、どんな症状でも共通してアドバイスすることがあります。それは、「速足で歩く」ということです。「病気の大半は速足で歩くだけで治る」と常々言っています。

 そのエビデンス(根拠)を示せといわれれば、示すことはできないので、 言い過ぎと言われてしまいそうですが、それでも「速足で歩けば良くなる』「速足で歩けば医者いらずになる』とは確信をもって言えます。

 ところが、現実はどうでしょう。風邪を引いたら、医者にかかり、薬をもらって帰ってくる。健康診断で生活習慣病疑いと判明すれば、やっぱり医者にかかり、薬をもらう。しかし、風邪を治す薬なんて存在しないということは、ご存知でしょうか。

 風邪薬と呼ばれるものはあるものの、その正体は、「風邪を治す薬」ではありません。単に、風邪によって生じた症状を抑えるための薬です。症状ごとに薬が出るため、風邪で3種類や5種類も薬が処方されます。病気によっては、10種類、20種類も飲んでいるという方もいるのが現状です。

 

 薬は症状を抑えるだけで、根本的に解決する(風邪そのものを治す)わけではないのです。
 このからくりは、医療のいたるところで見られます。つまり、あなたは病気を治したいと思って薬を飲んでいるかもしれませんが、実は、医者は治すことを目的にその薬を処方したわけではない……ということがよくあるのです。医者の説明をきちんと聞いてみると、「痛みを取るために、この薬を出しますね」「熱を下げるために、この薬を出しますね」と、気になる症状を抑えるために薬が出ているということがほとんどだとわかります。

 そもそも西洋医学のほとんどが、こうした「対症療法」なのです。

 

それとすべての薬には必ず副作用があります。

■ 老化現象でどんどん薬漬けに

 血圧が高いと言っては、降圧剤を飲むものの、薬で血圧を抑えている状態は「治った」とは言えません。糖尿病の血糖降下薬剤もまったく同じです。

 認知症に使われる抗認知症薬も、同じです。名前こそ、まるで認知症を治してくれる薬のようですが、現在4種類ある、いずれの薬の添付文書(薬の説明書)にも、「認知症を治す」とは書かれていません。書かれているのは、「認知症症状の進行抑制」。つまりは、症状が進行するのを抑えるというだけ。

 多くの薬は、根本的に治すわけではなく、症状を抑えるだけなので、生活習慣病や認知症といった慢性的な病気、症状の場合、薬を飲み続けなければいけません。そうして、常時、何種類もの薬を飲むことになったりするのです。

 特に年を取れば取るほど、気になる症状は増えるので、その分、薬も増えていくことになります。気づいたら、‟薬漬け”になっているということもあるかもしれません。

 しかし、年を取って、膝が痛くなったり、腰が痛くなったり、目がかすんだり、耳が遠くなったり、トイレが近くなったり……というのは、すべて病気というより、大体が齢のせいです。ところが、こうした当たり前の老化現象にも、それらしい病名がついて、治療の対象になっています。でも、本来は「老化」なのだから、痛みなどのつらい症状を取り除くことはできても、根本を治すことはなかなかできないのです。

 では、根本的に解決するには、どうすればいいのか――。その一番手っ取り早い、安上がりな方法が速足で歩くことです。

 

著書『病気の9割は速足で歩くだけで治る!』でも書きましたが、糖尿病や高血圧といった生活習慣病も、認知症も、うつ病も、不眠症も、逆流性食道炎も、便秘も、アトピー性皮膚炎、喘息、パニック障害も、すべて速足で歩くことが大事だと私は考えています。

 糖尿病や高血圧などの生活習慣病に関しては、速歩(運動する)という生活習慣が大事なんだろうと、容易にイメージがつくかもしれません。しかし、なかには、速足で歩くこととの関係が薄そうに見えるものもあるのではないでしょうか。

 なぜ、速足が、幅広い病気の“根本治療”になるのか――。速足でメタボを予防・解消するというのも大事なポイントですが、ここではあまり知られていない3つの「速足きの効能」を紹介しましょう。

 ひとつは、速足歩くと、免疫力が高まる、ということ。

 最近の研究で、適度な運動を行っている人は、そうでない人に比べて、免疫細胞のなかでもNK(ナチュラルキラー)細胞の活性が高まることが明らかになっています。ここで大事なのは、「適度な運動」ということです。あまりにハードな運動は、人間の細胞や遺伝子を酸化させて傷つける「活性酸素」を増やすため、かえって免疫力を下げます。なおかつ、NK細胞を活性化するには、楽しんで運動をすることも大事と言われています。つまり、楽しく速足で歩くことで、免疫力は高まるのです。

■ 胃腸が動くのも、速足歩けばこそ

 2つ目は、速足で歩くと、自律神経が整うということです。

 自律神経には、活動していたり、緊張・ストレスのあるときに働く「交感神経」と、リラックスしたときに働く「副交感神経」があります。この2つのバランスが乱れることで、生じる不調、病気は多いのです。

 たとえば、「逆流性食道炎」や「過敏性腸症候群」。逆流性食道炎は、胃液や胃の内容物が食道に逆流して、食道に炎症を起こし、胸やけなどの不快な症状を起こす病気で、過敏性腸症候群とは、腹痛や腹部の不快感を伴う下痢・便秘が慢性的に繰り返される病気のことです。
 これらの共通点は、器質的には異常がないのに、胃腸の働きが悪いということ。そして、胃腸の働きをコントロールしているのは何かと言えば、自律神経なのです。

 速足で歩いたらお腹がすいて、腸が動く。このことは、誰もが経験したことがあるでしょう。速足で歩けば、自律神経が活性化されて、胃腸のぜん動運動が自然に生じます。だから、自律神経の支配下にある胃腸の働きを整えるには速足で歩くことがいちばんの治療法なのです。

 

ちなみに、逆流性食道炎は、昔であれば、ただの「胸やけ』、過敏性腸症候群はただの「下痢と便秘』という言葉で表現されていました。それが今は立派な病名がついて、治療の対象にされています。しかし、胃腸の働きを整えるには速足で歩くことが非常に重要だったりするのです。

■ 速足で歩くだけで幸せな気持ちになれる

 速足で歩く効能の3つ目は、速足歩くと、脳内で「セロトニン」というホルモンが増えるということ。

 セロトニンは、「幸せホルモン」とも呼ばれる、脳内の神経伝達物質のひとつ。セロトニンが十分に分泌されていると、人は落ち着きや満足などを感じます。つまり、速足歩くだけで、人は幸せな気持ちになれるのです。散歩をした後は気持ちがいい、と感じる人は多いでしょう。実は、これは気のせいではなく、科学的にも理に適っていることなのです。

 ちなみに、うつ病にかかると、脳内のセロトニンが不足した状態になるという説が根強くあります。そのため、うつ病の治療では、「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)」や「SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)」など、セロトニン等の神経伝達物質を脳内で増やす薬が用いられます。しかし、同じ「セロトニンを増やす」方法なら、抗うつ薬を飲むより、速足で歩くほうがいいと思いませんか? 

 今、日本では、いろいろな病気が増えています。

 糖尿病人口は、950万人。高血圧人口は、4000万人。認知症人口は460万人、予備軍も加えると900万人。うつ病人口は、100万人超です。新たにガンにかかる人は毎年100万人、ガンで命を落とす人は毎年37万人います。

 確かに患者数は増えていますが、その大半は歩かなくなったことが原因といっても過言ではないのではないかと、日々患者さんと接している私は思えてならないのです。

 
■ 未来を変える「速足歩き方

 現代で増えているさまざまな病気の背景には、現代人が歩かなくなったということがある。私はそう確信しています。

 逆に言えば、速足で歩けば、それらの病気になるリスクを下げられます。病気を予防できれば、当然、寿命も長くなるでしょう。また、速足で歩くだけで「幸せホルモン」のセロトニンが増えるということは、心の健康にもつながります。さらに、速足歩けば血流が良くなり、脳内の酸素が増えるため、頭の回転も速くなります。「速足で歩く=手足を動かす」ことで脳が刺激され、脳内の神経細胞のネットワークも活性化されます。

 つまり、速足き、体にも、心にも、頭にも良いということです。

 では最後に、おすすめの「速足歩き方」を紹介しましょう。「まちをフィットネスセンターにする」。これが、私が勧める歩き方です。

 速足で歩くことが健康にいいとは知っていても、できない、続かないという人は多いはず。しかし、毎日歩くことが大事だけれど、何も、特別なウォーキングを毎日しましょうということではありません。毎日の生活のなかに、「速足歩き」を組み込んでみるといいということです。

・降りるべき駅の一駅手前で降りて、速足で歩く
・電車の乗り換えでは、あえてたくさん速足で歩けるルートを選ぶ
・買い物は、ちょっと遠いスーパーや商店街に行き、遠くの駐車場を利用する。
できるだけ階段を利用する
・雨日は地下街を速足で歩く

 

 そんな風に、日常をフィットネスセンターに変えるオプションをたくさん持っておくと、楽しみながら速足で歩くことができるでしょう。

 あなたの生活のなかには、「速足歩き」がちゃんと組み込まれていますか。これを機に見直してみてはどうでしょうか。

 

最後に速足歩きのコツは足指で大地を蹴るイメージで歩くことです。

 

●踵を摺りながらだらだらと歩くのであれば歩かないほうがましです。

 

長尾和広著『病気の9割は速足で歩くだけで治る!より抜粋

参考:

・早歩き https://kenka2.com/articles/255

・うつ・認知症を防ぐ https://kenka2.com/articles/868

・病気予防速歩 https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/140.html

参考図書:

・医者が進める1日30分の速足健康法、佐藤祐進著

・あらゆる病気は歩くだけで治る・健康長寿の黄金律がここに、青柳幸利著

・認知症は歩くだけでよくなる 認知症予防と改善に最良の方法は ながら歩き、長尾和宏著

・病気の9割は歩くだけで治る、長尾和宏著

・歩き方を変えるだけで10歳若返る、能勢博著

・インターバル速歩の秘密、能勢博・根本賢一共著

 

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